正確な組み合わせは忘れてしまったが、『ギルモア・ガールズ』でローリーは長編小説と短編小説と詩集と自叙伝をリュックに入れて通学していた。なんでこんなに本を持ち歩くか?長編小説が読みかけだけれど、読み終えたり、そうでないものが読みたくなったら困るからだとローリーは言う。わたしも同じで、研究で読む本や論文を除いたとしても、数冊同時に読み進めている。具体的には、数週間前に『LESS』を読み始めたけれど、それはほぼ放置してコニー・ウィリスの『ブラックアウト』を読み出し『オール・クリア』の上巻まできた。それと並行して『ゾンビ襲来』を再読している。こうやって読んでいると、「しばらく放置」が「完全放置」になり、そのうちほかの本を読みだして忘れてしまう。放置したり忘れてしまったりするのは面白くないからというわけでは必ずしもなく、でもなにか理由があったりする。
先日、友人たちとオンライン積読会をした。オンライン積読会というとオフライン積読会もあるように思えるが、わたしたちは蔵書をすべて持ち歩けるわけではないのでオンラインでしかできないのではないかと思う。買ったけれど(もしくは、もらったけれど)読んでないのだから、読んでない理由が当然あるわけで、なんとなくだけれど読書傾向を知っている友人のそういう話を聞くのは興味深い。たとえば、妖怪が好きな友人は『ルー=ガルー』をSF小説だから放置しているという。そりゃそうだ。百鬼夜行シリーズを好んで読んでて近未来を舞台にしたSF少女小説を手渡されたらびっくりする。米澤穂信の日常の謎が好きなのに「ヨーロッパ、魔法」などのキーワードを目にしたら、小市民を目指してくれないのか!となる。わたしもなる。
これと少し理由がかぶるのだけど、食わず嫌いをしているジャンルというのがあり、その中でもファンタジーとSFは「なんか読まない」となりがち。そして、上で挙げた積読本2冊はちょうどSFとファンタジーである。実際、わたしはファンタジーが苦手だ。魔法とかよくわからない。ハリーポッターに関してはフクロウとドビーがかわいいなくらいの感想しかでてこないし、氷と炎の歌を読むことができるのはドラゴンや魔法の登場が最小限に抑えられていて、ゾンビみたいなのが登場するからだと思う。わたしはゾンビがすごく好きだ。
もう一つの理由が「買って満足」というもの。たとえば、本屋に行き「これは!」というタイトルと装丁のノンフィクションを目にして買うけれど、テンションのピークは買ったとき、というやつ。うちにある積読本が積まれている理由の一つはこれで、学術書や翻訳小説はそんなに数が出回らないので、買い逃すとやばいからなるべくすぐに買うようにしている。実際、いまわたしはトニ・モリソンの『ビラヴド』を買い逃して後悔している。いま読みたいのに!「翻訳でたんだ!わーい!」と買い、その後放置したりするけど、いつかその時のために置いてあるのだ。あと、特に学術書なんてそんなにポンポン読めるものではないし、自分の研究分野以外の学術書は後回しになりがち。
最後に、わたしが本を積んでしまう一番の理由はフィジカル面からが大きい。重い本は持ち歩けないから電車で読めないし、自宅で読むにも辞書みたいだから身体的に辛い。ページを手で押さえるだけで結構疲れる。アイン・ランドの『水源』とか筋トレだと思う。だから文庫が好きだし、京極夏彦は面白いけど意地悪だなと思っている。文庫なのに1000ページ超え!なぜ2冊に分けてくれないのか!コニー・ウィリスの『ブラックアウト』や『オール・クリア』はなんて親切なんだと思う。じゃあ、買わなければいいのでは?と言われると、京極夏彦は売れっ子だから大丈夫だろうけど、分厚くて重い翻訳小説とか買い逃すと図書館に頼る以外なくなり、いまわたしは図書館を頼れない状況にいるので、以前よりいっそう買わないという選択肢はない。
「読んでない理由」についてしゃべるという大変積読会っぽい話をする一方、やっぱり、勝手に相手にこれを読んでほしいなどと言い出しはじめ、わたしは前回『亡命ロシア料理』、今回『スパイのためのハンドブック』を勧められたので自分で気が付かないうちに冷戦時代感を出しているのかもしれない。
とりあえず、メモ用に話に出た本を不十分だけれど思い出せる限り載せとく。
The Best American Short Stories 2018 (The Best American Series ®) (English Edition)
- 作者:Gay, Roxane
- 発売日: 2018/10/02
- メディア: Kindle版